やかんです。

英米法の勉強です。この辺の話はねー、もう細かい手続き的な話な気がしてよくわからんのですわ、正直。

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※内容は僕のパブリックメモです。

大陪審と小陪審

大陪審は、起訴を決定する人たち。小陪審は民事訴訟や刑事訴訟で、事実認定を行う人たち。なわけなので、日本の陪審はアメリカで言うところの小陪審に近いです。

ちなみに、

  • 大陪審 : grand jury
  • 小陪審 : petty jury

です。また、

  • common law : 陪審あり。
  • equity : 陪審なし。

で、そのため民訴(基本的にcommon law)は原則陪審が付きます。刑訴の場合は、重大な事件のみ陪審が付きます。

また、イギリスの場合は、刑訴についてはアメリカとおんなじ感じで、民訴についてはアメリカよりも陪審の適用範囲が限定的だそうです。

後述しますが、アメリカにおいては大陪審がめちゃめちゃ強くて、例えば召喚状(subpoena)の発令権限があります。これに私人が背いた場合、その私人は裁判所侮辱(comtempt of court)に該当することがあります。

小陪審

まず、小陪審についての用語を整理する。

  • voir dire : 陪審員候補者を選定する過程で行われる審査のこと。裁判官や弁護士が候補者に質問をし、公平かつ偏りのない陪審員を選ぶために行う。
  • challenge for cause : 理由付き忌避(後述)
  • peremptory challenge : 理由なしの忌避(後述)
  • trial : 裁判
  • jury instruction : 陪審員への説示。裁判官が陪審員に対して法律の説明や適用方法を指示する。
  • Deliberation : 評議。陪審員が評決を下すために行う協議の過程。
  • Verdict : 評決。陪審員が下す最終的な判断。

大陪審

割と小陪審に関して登場した概念が大陪審についても、多少の違いはあれ妥当する。

まず、用語整理。

  • grand jury investigation : 大陪審が行う調査や捜査活動。前述の通り大陪審はめちゃめちゃ強いので、強力な調査が可能。Subpoenaとか。
  • The shield and the sword : 盾と剣。大陪審の担う二重の役割を言い表す比喩的表現。
    • shield : 市民が不当に起訴されることを大陪審は抑止することができる。
    • sword : grand jury investigationとかで、被告に対する追及が可能。

陪審制についての国際比較(米、日、独)

英米法と大陸法(ドイツ)を比較してみたら、その中庸的ポジションに日本がありますね、みたいな話だと思っている。

この比較については、授業で扱われたレジュメに記載されている説明をまるっとぱくります(所々省略あり)。著作権的に不味いなどあればご指摘よろしくお願いいたします。

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東大の教授は割とこういうの寛容なんですけどね、、

こんな雑な引用の仕方を他のところでしたら、多分瞬殺されます。

選任方法、任期、人数、対象事件、評議及び権限、評決の6項目において箇条書きします。国ごとに書いた方がそれっぽいかもですが、「比較」という点に力点をおきたいので、項目別にまとめます。

まずは選任方法。

  • アメリカ:選挙人名簿等から無作為に抽出した上、陪審員の資格を有しない者、当事者が忌避した者等を除外して、陪審員を選定する。
  • (日本:選挙人名簿から無作為抽出した者を母体とし、その上で、公平な裁判所による公正な裁判を確保できるような適切な仕組み(欠格事由や忌避制度等)を設ける。)
  • ドイツ:市町村において、議会の同意を得て、参審員候補者名簿を作成する → 裁判所に設けられる参審員選任委員会において、その名簿の中から参審員を選定する。

日本にも忌避制度はあったんですね。てか、ドイツ厳格ですね。

次に任期。

  • アメリカ:具体的事件ごとに選任
  • (日本:具体的事件ごとに選任)
  • ドイツ:4年間の任期制

ドイツすごいですね、日本の陪審制とかのイメージで考えると、ギャップがすごいです。

次に人数。

  • アメリカ:裁判官1名、陪審員12名
  • (日本:裁判官3名、裁判員6名)
  • ドイツ:裁判官3名、参審員2名

それぞれ、若干の変動はあるようですが、概ねこんな感じ。アメリカの、裁判官1名とはどういうことだと突っ込みたくなります。

次に対象事件。

  • アメリカ:一定の軽微な犯罪を除き、被告人が否認している事件で陪審裁判を選択した場合。
  • (日本:決定刑の重い重大犯罪)
  • ドイツ:一定の軽微な犯罪を除き、原則として全ての事件

まずアメリカでは、陪審をつける権利、みたいなのが憲法上の権利として保障されている点に着目したいですね。ドイツが原則全ての事件について陪審を認めている点にも「おおっ」となります。で、日本の場合は陪審を付す付さないという点について被告人による選択権がないという点にも着目したいです。国ごとに違いがありますね。

次に評議及び権限。

  • アメリカ:陪審員のみで評議し、有罪無罪の評決を行う。
  • (日本:裁判官と裁判員は、ともに評議し、有罪・無罪の決定及び量刑を行う)
  • ドイツ:裁判官と参審員はともに評議し、有罪・無罪の決定及び量刑を行う

ふむ。アメリカは有罪無罪の判断に止まるけど、日独はそれに加えて量刑まで踏み込むんですね。アメリカの「陪審員のみで」という点にも着目です。反エリーティズムってことなんかな?

最後に、評決。

  • アメリカ:有罪評決は陪審員の全員一致。
  • (日本:裁判員が関与する判断は裁判官及び裁判員の双方の意見を含む合議体の員数の過半数が賛成する意見による)
  • ドイツ:有罪判決は裁判官と参審員の2/3の多数決

ふむ。

通してみると、アメリカは「誰でも陪審員OK」というオープンな姿勢であるのに対し、ドイツは「選ばれし者が責任を持って」という専門性の強い姿勢であると言える気がします。

百選63事件(Batson v. Kentucky)

アメリカにおける陪審についての忌避に関して争われた事例。事例自体は、結構現代において示唆的な内容だと思っている。

これは判旨がわかりやすいんだよな。ちょっとずつ引用する。

一世紀以上前、本法廷はStrauder判決(Strauder v. West Virginia(1880))において、州が陪審から黒人を意図的に排除した陪審による裁判を黒人である被告人に受けさせることは、合衆国憲法第14修正が保障する法による平等な保護への権利の侵害であると判示した。

1965年のSwain判決は、陪審員候補の選定における差別を禁じるこの平等保護の原則は検察が陪審から個々の候補者を排除する「理由不要の忌避」権の行使にも適用されるとしたが、本判決もこの原則を踏襲する。

だから、理由不要の忌避は認めるけど、それが平等保護の原則に反する場合は認めないよ、ということだろう。

でも、本事案においては、Swain判決をまんま踏襲するのではなく、部分的に修正を加えます、というスタンスのようです。

我々は、Swain判決が課した立証責任を退け、以下のような基準を採用する。被告人は、検察の「理由不要の忌避」についても、彼自身の事例における事実のみに依拠して、検察の意図的人種差別につき「一応の証明」をすることができる。

Swain判決では、「この理由不要の忌避は平等保護の原則に反している!」というために原告に課された立証責任が重すぎたんですね。いや、重すぎて事実上できないやろ、みたいな。

これを修正し、本件では立証責任が緩和されています。

ただこれで万事解決というわけではないようで、本件以降も、「それっぽい理由をつけて人種差別っぽい忌避をする」というのは行われているようです。

ということで、こちらのパブリックメモも終了。最後までお読みいただき、ありがとうございます。